2020年07月29日

走馬灯のように振り返って (思い出の2019)



やはり天井だったのか


人の心理を弄ぶことに
ついて金融庁はおとがめなしに
錯乱するほど狼狽えたが
気を取り直して
経済について考えます。

いかに経済的に車窓から
景色を眺めることが
できるのか?

これでも経済です。





景色だけならタダ

2019年8月のことでした。私はある仕事で騙され 3万4千円を持ち逃げされていたのでした。 日常生活にも支障をきたすほどのストレスを 抱えていてストレス解消にどこか旅に出たい、 しかし旅に出る金もないと悩んでいたとき、 JRに大回り乗車という金のある者には全く無意味な効率の悪い乗車方法があると知ったのです。 それは同じ駅を2度通過することなく一筆書きの ように辿れば途中下車はできませんが大都市近郊区間内の特例として初乗り切符つまり最短経路の運賃で回ることができるというJR社員の盲点をつくような手法です。麻雀でいうならば振りてんさえしなければ客の勝ちというようなルールです。しかし、ここで注意を払わなければならないことは大都市近郊区間に指定されている地域は仙台・新潟・東京・大阪・福岡の5箇所に限られるということです。ですから残念ながら名古屋地方の方々には当てはまりませんので悪しからずご容赦ください。最初に誰が試したのかは知りませんが一休さんのとんちのようなルールに私は縋ったのです。 自宅近くのバス停から最寄り駅であるJR百舌鳥駅まではバスで移動することにして8月某日朝7:00に バス停へ向かいました。天気は晴れ、暑くなりそうだと予感しましたがどうせ途中下車はできないので車内にいるわけだから冷房は効いているし差し支えないだろうと楽観視していました。 ところが前述しましたがストレスが溜まっていたのでしょうか。バスの時刻表を見誤っていてバス停に到着した時にはすでにバスは通過していました。私の近所の路線バスはやや辺境にあり1時間に2本しか走っていません。次は30分近く待たなければならないのです。あまりに無駄な時間だと認識させられてやむを得ず百舌鳥駅まで徒歩で行くことにしました。これが失敗でした。まだ早朝とはいえ真夏の炎天下は厳しく途中から汗が滲んできました。旅に出るや否や、いや、まだ日常生活の範囲内でくたびれてしまっている自分に嫌気がさしていました。 リュックサックを背負った背中が汗で湿った頃、漸く百舌鳥駅に到着しました。 やっと旅のはじまりです。自動券売機でどこまで買うか考えましたが一筆書きで戻ってこれるところとなると前後一駅区間が分かりやすいと思います。百舌鳥駅から一つ南下した上野芝駅までの切符を購入しました。駅のホームで電車を待つ間、駅のすぐそばには世界遺産に登録されたばかりの百舌鳥古墳群があります。皮肉なもので十分な観光スポットでありながらそこに寄らずに旅立つ自分が不思議だと複雑な気持ちにさせられていました。 すでに時刻は8:00を過ぎていましたが、 到着した上りの関空快速へ乗車したのです。 関空快速とは関西空港と京橋をつなぐ天王寺、 新今宮、大阪を経由する快速のことで私は このまま外回りで大阪駅へ向かうこともできるが 内回りの方が見所が多いと独断で天王寺で下車 しました。その後環状線に乗り換え内回りで 大阪駅へ向かいました。鶴橋駅では日本一広いと いわれるホームを眺め、大阪城公園駅そばでは 大阪城の雄姿を眺めました。大阪城は数少ない ナイトスポット(夜間照明)のあるお城として 有名ですが午前中に通過してしまったことは、 貧乏の為せる業だと思えます。 大阪駅で東海道線に乗り換えるのですが、 大阪駅は数年前に大リニューアルをしていて 環状線の場所も以前と変わってしまい途方にくれ ましたがなんとか東海道線のホームへと辿り着き新快速米原行きへ乗車しました。そして、京都駅では 日本一長いといわれるホームを眺め、大津を過ぎ滋賀県草津駅で下車しました。まず駅構内の売店に立ち寄り土産物を探しましたが、コンビニエンスストアで売っている商品ぐらいしか売っていませんでした。やむを得ずトイレを済ませて草津線のホームへと向かいました。ここは草津線と交わる駅です。今日の私のメインはこの草津線へ行きたかったのです。この路線は甲賀地方を通過するものでNHKの朝ドラでもおなじみのスカーレットな信楽焼きの産地でもあります。しかしJRの車内は信楽焼きよりも甲賀忍者を前面にアピールしていました。他人事ながらこの地方の人々は留守できるのだろうかと余計な詮索をする始末です。近江富士のバランスのとれた稜線を眺めつつ終点の三重県柘植駅に到着しました。この駅は今度は三重県伊賀市ですので伊賀忍者が駅のあちらこちらでアピールされていました。 さすがに辺境の地までやってきたんだと実感されられました。なんとここで1時間ほどの時間待ちを余儀なくされたのです。しかし初めて立ち寄った場所は好奇心も沸き苦にはなりません。真夏の日中にもかかわらず蝉しぐれが種類さえも分からなくなるほどの大合唱となり心を癒し都会で騙しとられた金を還元してもらえた気にもしてくれます。このようなチャンスを与えてくださったJRにも感謝です。待ち時間中に駅を散策していると同じく一人旅の女性を見かけました。やや太めの方です。そんなことはなんだってよいのですが、私が痩せ型のためなぜか珍しかっただけです。私は時間待ちで暇なことも手伝って声をかけてしまいました。 「旅行ですか?」 女性は 「はい。18切符で。」 この18切符というのはJRが毎年春、夏、冬と3期に渡って発売しているおよそ2000円で新快速までなら一日乗り放題途中下車OKというもはや知らない人は先日までの私ほどに世間から騙されている人ですが、有名な優れもの切符のことです。 私はこの存在を知っていたが為に聞くや否や この人についていっては破産してしまうと腰が引けてしまいました。女性は名古屋からの旅人ですでに奈良の古刹を回り終えて復路だということでした。幸いその女性は反対方向の私が今来た草津駅へ向かって私の待っている電車より15分ほど早く立ち去っていきましたが、もしも同じ方向であったとしても18切符だといつでもどこでも下車できるため一緒に旅しようなどと目論んでいると最悪次の駅で終了するというハメに陥ってしまうこともあるのです。ここでも貧乏を認識させられましたがその後駅の待合室にはエアコンが設置してあり持参した本で読書をして快適に過ごすことができました。 その後あまり待ったという感覚もないまま関西本線へ乗車したのです。この柘植から木津川までの区間にあたる関西本線は今はやりの秘境と呼ぶに十分な 景色を満喫させる路線です。木津川沿いを走るのですがただただ薮の中を走ったり、鄙びた温泉跡のような情景の中をを走ったりと取り残された近畿と呼びたくなる地域です。車両は2両編成で利用客はこの当時はまだ多く、座るところもなく立ちっぱなしでしたが、途中女子高生の下校中と重なり景色とはウラハラにかなり賑わいました。終点加茂駅に到着し天王寺行きに乗り換えです。 この電車で注意を要することは天王寺まで乗車して しまうと一筆書きが終了してしまいますのでこの大回りは終止符です。まだ大回りしたければ奈良駅で桜井線に乗り換え和歌山方面へ行かなければなりません。非常に迷いました。この旅が少し楽しくなっているのは事実ですが、和歌山まで行くのは少し荷が重いとも感じられます。しかし、私はこの貧乏から情け容赦なく3万4千円を奪い取った悪たれ達を思ったのです。ここで私も情け容赦なく大回りを決行してこそ奪回できるのだと。 吹っ切れた風に何の迷いもなく奈良駅で下車しました。そこで土産店を探しましたが駅構内に売店は ありませんでした。奈良駅ほどのメジャーな駅に 売店がないとは残念な思いもしましたが、それに 勝る旅の喜びを知った私には苦にもなりません。 奈良線のホームへと意気揚々と向かいました。 奈良線には快速はなく各駅停車で奈良県の 桜井駅まで行きます。桜井線では京終(きょうばてと読みます)駅を通過したときには私の昨日までの気持ちを代弁してくださったのかと妙に感心し、またこの駅の最寄の人は騙された人々の集落なのかとかあれこれ思いをめぐらせ三輪神社の鳥居を遠くに視界が捉えたときはあれが日本で2番目に大きいといわれる大鳥居だと感慨に耽ったりしました。 桜井駅からは高田駅までの各駅停車 に乗り換えです。桜井駅のホームでの時間待ちは 真夏の真昼でありながらホームにエアコンのきいた 待合室もないという厳しいものでしたが、暑さが助けてくれたのか超ミニスカートの女の子が私の前に立ち電車を待っているのです。その太ももをおかずに予め持参していた黄粉餅を昼食がわりに食しました。喜んでいいのか悲しんでいいのか。 その後高田駅に到着し暫くの発車待ち時間を経過した後、この路線も快速はなく各駅停車でひたすら 紀ノ川沿いを和歌山駅までゆらゆら行くことになりました。この路線は万葉の日本を彷彿とさせる難読駅名が頻出します。いくつかご紹介しておきます。 掖上(わきがみ)、隅田(すだ)、中飯降(なかいぶり)、布施屋(ほしや)、千旦(せんだ)といった具合です。 のどかなイメージで時刻表もまばらです。 ようやくここへ来て他の乗客に旅人らしき人を 目にするようになりました。今までどこにいたのだろうと不思議にさせるほどあからさまにカメラで車窓からの風景を撮影しています。 途中笠田駅に停車したときにはかの若手人気俳優の溝端淳平がこのあたりから東京まで出て行って 成功したのかということを思い出さされ薄ら笑えます。この駅名も"かさだ"ではなく"かせだ"と読ませるのですが風情ある駅舎と東京のギャップに溝端のハートの強さに感心さえしました。 そして和歌山駅に到着し下車したところホームに改札口がありました。阪和線に乗り換えるだけなのに 検札するようです。絶体絶命のピンチかと暑さ以外の汗が流れました。他の旅行客らしき人もどうやら 大回りのようで改札を通ることを躊躇っているようです。私の認識する限りで私の他に3人いたと思います。そのうちの一人が意を決したように改札へ向かいました。大回りとその客が駅員に告げた言葉が聞こえてきました。すると駅員はその客を当たり前のように通したのです。それを見た時は私も自分のことのように喜べました。 そして続いて百舌鳥~上野芝間の切符を駅員に 提示したのです。女性の駅員はその切符を見て 全く動じることもなく私を通したのです。 思うにこの大回り乗車を利用した客が日常茶飯事のように出没していて駅員も慣れているのだろうということです。そして阪和線ホームへ辿り着いたときに二重の喜びを与えてくれたのは駅構内に売店があったことです。 私はこの旅の締めくくりとして土産品である福菱さんのかげろうを購入することとなったのです。 午後18:00にめでたく百舌鳥駅の一つ手前の駅である上野芝駅に到着しました。何ら変わりもなく、否少々の足の筋肉痛を伴って。


            完


コロナにつきましては
自己責任で御願いします。


  

Posted by sd628 at 17:10